2016年3月19日土曜日

イコンについて

昨年の教会報に掲載したものです。読んでない人に参考までに。

2015111

玉川大学教育博物館2015年度特別展示
「山下りん・日比和平が描いたイコン」展を見学             
柏久保教会  真野 満
 1014日に家から近い玉川大学に行きましたら偶然にも神父様ご夫妻、静岡教会の皆様にもお会いできました。大学の説明では、日比和平のイコンは、ふき取るだけで汚れが取れたが、山下りんのイコンは煤と乳香などで痛みがひどかったのを美術保存協会の方が修復してくださり、その修復状況も展示してありました。丁寧な修復により見事に描いた当時のイコンが甦りました。静岡教会の方々も喜ばれていました。日比和平のイコンは、下塗りに金を多用しロシアイコンの描き方に忠実に描かれたもので、そのゆるぎない構図とその当時の新しい描き方を用いて和平の確固たる信念を表していると感じました。りんは伝統的なイコンの描き方と違い、その優しいタッチで何度も色を重ねる筆使いを見ても女性らしい慈愛に満ちた描き方に心が癒されます。りんの略歴を見て私にも縁がある事が分かりました。私は1975年交換留学生の時にサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に行き、あこがれのゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ、ラファエロ、エルグレコ等の絵が触れる距離に無造作に展示してあるのに驚きました。間近に、なめるようにその筆使い、油使い、においに触れ彼らの息吹を感じる事ができ感動に腰が抜ける思いでした。その93年前に25歳のりんも同じラファエロなどイタリア絵画に触れ、私以上に感動に打ち震えてむさぼるように模写に励んだと思います。りんは西欧絵画を勉強したい気持ちと伝統的なイコンを描くこととの板挟みになり悩んだようでした。帰国した後に、ニコライ大主教から「日本の、日本人のためのイコンを描きなさい。」と言われて、自分の納得するイコン制作に励みました。制作年月日及び制作者のサインがないイコンですが、りんは唯一自分が署名した「ウラジミールの聖母」を亡くなるまで肌身離さず持っていたようです。このイコンにりんの全ての思いが描かれていると思います。このイコンに会いに11月に笠間に行きます。また柏久保教会のイコンは明治44年にりんが贈ったもので、制作年の判明している貴重なイコンで作風も以前のりんとは違う白を多用し筆使いも違うようですので改めて見たいと思います。
今回、静岡教会が寄贈したイコンを見事に修復してくださった玉川大学の関係者のイコンに対する深い愛情と理解に接し、感謝の気持ちでいっぱいです。またここに来ればイコンに会えると思うとうれしい限りです。



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